これからマスターズ水泳の大会に会員を出場させようと頑張っている、スイミングコーチ初心者の皆さんに、ハタオジ自身が体験した失敗談とマスターズ水泳の意図を知ってもらうことで、より有意義な指導業務を応援する内容です。
最初に失敗談?と思われるかもしれませんが、その通りだと思います(笑)
こういうことがあるんだなということを知った上で、指導してみてください。私自身も競技者として失格をした経験があり、とても悲しい思いをしました。今では笑い話ですが、、、ぜひ参考にしてみてください。
出発合図の前にスタート
最も多い失格理由です。
「テイクユアマークス」で泳者は動きを止めないといけませんが、これがなかなか難しいのです。
出発合図の前にスタートした競技者は失格となる。
出典元:www.masters-swim.or.jp › pdfPDF
競泳 – 一般社団法人日本マスターズ水泳協会
どうして多くなるのかというと、多くのスポーツクラブでは『飛び込み』が禁止されていて、ほとんど練習していないからです。
スイミングコーチ達は、「みなさん大会に出ましょう!」と言う割には、その部分の配慮が足りないのです。しかし、このコーチ達の対応にも理由があるのです。
水中からスタートする競技者は、速やかにプールに入り少なくとも一方の手でス
ターティンググリップを持ち両足をプールの壁に付ける。
出典元:www.masters-swim.or.jp › pdfPDF
競泳 – 一般社団法人日本マスターズ水泳協会
というルールがあり、「難しい人は水中からのスタートで問題ない」と軽い気持ちで思っているからです。
しかし、いざ大会参加すると、スタート台からの飛び込みによるスタートをせざるを得ない状況が待っているのです。
そして、練習をしたことがない方法でのスタートとなるので、当然失敗(失格)します。
飛び込まざるを得ない参加者の心理
初めて参加する方も大会前までは水中からスタートするつもりなのですが、いざ参加してみると、水中からスタートしているのは、飛び込んだら骨が折れてしまいそうな年配の方ばかり。
『自分と同年代や年上であろう人達は、飛び込んでいるじゃないか。』
ということに気づいてしまうのです。
参加者の約1%程度の人しか水中スタートを選択していないという現実を目の当たりにしてしまいます。それを見てしまったら、急に自分が水中スタートを選択する事が恥ずかしいと思うようになってしまうのです。
そして、ドキドキしながら自分の順番を待っていると、、、、
頭が真っ白になってしまい、なぜそうなるのかわかりませんが、ひとつの希望的観測ともいえる案が浮かんでくるのです。
あんな年配の人でも飛び込めてるんだから、自分も飛び込んでスタートできるんじゃないか?
その考えに対してコーチとしていえることは。。。。「いえ。そんなことはありません。無理です(笑)」気持ちは分かりますけどね。私もこのようなお客さんと大会に出場しましたが、その方がスタート台に上がると、コーチ達もパニックになります。
佐藤(仮)68歳 男性 のケース
水泳歴3年目。
元々、奥さんが通ってた事もあり、定年を機に入会。
フラダンスにハマっている奥さんをしり目に、自分も何かを始めようと考える。
成人スイミングスクールに通い初めて2年がたったころ、担当コーチに大会に出ましょうと誘われる。
あまり興味がなかったが、コーチも可愛くて好きだし、いいところをみせたいと、来年の大会出場を約束してしまうのだった。。。
大会当日、スタート前に名前を呼ばれる
★コーチ
あれだけ「名前呼ばれたらプールに入ってね」って言い続けてきた佐藤さんが、スタート台に上がっている。。。。。佐藤さん!!!!下!下!(志村かよ。)
☆佐藤(仮)さん
。。。。(引きつった顔で手を振る)
★コーチ
(そうじゃないんだよな。。これはやばいかも。。。。)佐藤さん!!!!水中スタート!!
☆佐藤(仮)さん
。。。。。。(何かを悟ったように、ゴーグルをピースの指でグッと押さえ、左胸を力強く掴む。そして、いままで誰もしたことがないような初めて見る待機姿勢をとる)
★コーチ
(なんだあの構えは。。笑。ユーチューブで「新しいスタートスタイルを考えてみた」みたいなのでもみたのか?てか静止するのが早すぎるのでは。。けどもう応援するしかない)佐藤さーん!頑張ってー!!!
◆笛の合図
ピッピッピッピー!!
☆佐藤(仮)さん
。。。。。(ふらふら)
★コーチ
(やばいかも汗)。。。
◆合図の人
テイクユアマークス
★コーチ
(怪我だけはしないで。。祈。やるなよー。やるなよー。絶対やるなよー。フリじゃないからなー。。祈)
◆スタート台
ガコンッ!(※飛んだときのスタート台の音)
★コーチ
(あ。。驚。これはやっってんな。やっちまったかも。。)セーーイ!!!!!
0.2秒後
◆電子音
プッ!
★コーチ
(うん。失格だな。審判もインカムでなにやらもちょもちょ言ってるし。けど泳いでるから怪我はなさそうだな。とにかく応援しよー)セーイ!セーイ!セーイ!
3分後
☆佐藤(仮)さん
(お腹の下の方と左胸を真っ赤にして満足そうな顔で帰ってくる。)いやー。緊張したなー。何秒だった??
★コーチ
(左胸は腹打ちか?掴み過ぎか?北島見過ぎなのか?タイムのことなんて言おうかなー。)お疲れ様でしたー。佐藤さん水中スタートって言ったのになんで飛び込んだんですか(笑)びっくりしましたよ。タイムのことなんですけど、実は。。。。。
◆放送
先程行われました、プログラムナンバー〇〇、〇レーン、佐藤さん、フォルススタートにより失格です。
★コーチ
いい経験になりましたね。また来年またここへ来ましょう!(甲子園か!)
☆佐藤(仮)さん
はい。頑張ります!(と言いながら涙目でゴーグルケースにプールの水を入れて持って帰ろうとしている。)
☆コーチ
(甲子園か!)一緒にがんばりましょう!
マスターズ水泳裏話
余談ですが、コーチがやってる応援の掛け声は何を言ってるのかスタッフでさえ実はよくわかりません。みんな雰囲気で覚えます。なので、クラブ毎に特色があり、中にはクセが強いものが現れます。
コーチ達の大会での醍醐味は、いかに他のクラブよりも目立つか?です。
「会員の皆さんには大会に参加する事で今後の楽しみを見つけてもらいたいんです!」というのは建前。
考えてみてください。
マスターズに関わるお金の流れは以下の通りです。
- マスターズ登録料→マスターズ協会
- 大会参加料→大会主催者
- 引率スタッフの人件費→店舗
- 引率スタッフの移動費→店舗
- エントリー等の事務作業→店舗
実は結構お金がかかっていて、クラブとしてみたらただの赤字なんです。ではなぜ赤字でもやるのでしょうか?
「マスターズに出る人は店舗をやめない」
「大会に出ることでクラブの名前が認知されるから広告効果があり転籍を狙える」
という「嘘みたいな本当の話」として、都市伝説みたいな定説があるからなんです。やめない人達に対して、転籍を狙うって変じゃないか?
やめない盾と認知させる矛
これぞ矛盾。諸刃の剣。二兎を追うもの一兎をも得ず。まだまだ出てきそうですが名誉のため割愛します。
都市伝説かどうかはさておき、ほとんどのスポーツクラブは上記の意図でマスターズ水泳に積極的に取り組みます。
サービスの提供の先には会社の利益を得るという目的があるということです。
当たり前ですよね。
残念ながらこういう社会の仕組みをわかってない人が、過剰に、引率の対応が悪いとか、もっと引率を手厚くしろとか言ってきます。
「じゃあもっと会費もらっていいですか?」と私なら伝えます。
そういうことがわかった上で、民間のサービスを受ける方が増えると、サービス業に従事する人が増えるかもしれませんね。