子どもの習い事No.1といえば、スイミングスクールが不動の存在です。
以前の記事に、「選ぶ前に知っていてほしいこと」と「スイミングスクールの選び方①」を紹介しました。
今回の記事では、スイミングスクールの選び方で悩んでいる方が、選ぶ際に見るポイントや確認するポイントを手順とともに分かりやすく説明した、スイミングスクールの選び方①の続編です。
この記事を見たあとには、スイミングスクールの選び方を人に教えることが出来るようになっていると思います。
比較する際には、実際に自分の目で確認しましょう。『百聞一軒にしかず』です。
クラス人数とクラス編成での比較
人数での比較
パッと見で判断しがちなのが、クラス当たりの子供の人数です。すべてのコーチの能力が同じであれば、人数で判断していくと比較しやすいですが、そうはいきません。
新人コーチ2名よりもベテランコーチ1名のほうが圧倒的に良い指導をします。(泳法習得においても安全管理においても)
よって、良いスクールかどうかの判断はクラスの人数という情報だけでは判断できません。
では、なんの情報を確認したらよいか?
それは、『コーチ一人あたりの平均担当人数』と『各グループの人数が階段になっているか?』です。
クラス人数での比較
『コーチ一人あたりの平均担当人数』
対象の時間の参加者人数(子供の数)÷水の中に入っているコーチの数(監視員は除く)
目安はこちらです。
- 3歳から6歳(未就学)→8名
- 7歳から8歳(低学年)→11名
- 9歳から12歳(中高学年)→14名
- 13歳から15歳(中学生)→16名
あくまで目安ですが、この人数よりも少なければ良いと言うものでもありませんし、多ければ良いというものでもありません。
また、上記の年齢で絞って受入れているわけではないので、総合的に判断する必要があります。(※前提として、子供の泳力向上は1クラスあたりの人数が少なければそれだけ早くなるというわけでもありません。)
一般的な会費で、同じような立地条件だとすると、この目安の人数が健全な経営の基準(儲けすぎず、企業として成長していける利益がある状態)と言えると思います。
目安から大きく外れている場合、あらゆる可能性が考えられますが、
目安より多い
レッスンとしては、過剰に利益をとっていて他の部分に投資している。
あるいはコーチに無理をさせている。
目安より少ない
より効率的な運営自体を目指していない。
コーチのスキルが低いため、人数を増やせない。何かしらの理由で集客できていない。
などのことが考えられます。
グループ編成での比較
『各グループの人数が階段になっているか?』
プール初心者クラス→ある程度泳げるクラスのグループ分けが、1G→2G→、、、、→6Gという呼び方としたときに、7名→10名→12名→13名→16名→18名、という状態のように階段を登っていくようになっているか?ということです。
クラスの編成方法は、『級わけ法』か『人数わけ法』のどちらかです。
『級わけ法』
人数優先ではなく、級の区切りの良さを優先にしたグループ分けの方法です。
- 1G 12名 水慣れ コーチ2名
- 2G 4名 けのび コーチ1名
- 3G 14名 キック コーチ1名
- 4G 8名 クロール コーチ1名
- 5G 19名 背泳ぎ以上 コーチ2名
メリット
いろいろな泳法を含んだクラスではないので、カリキュラムを覚えやすい、説明しやすい、新人スタッフも覚えやすい、という点です。
デメリット
人数が凸凹していることで、進級したら人数が急激に増えたという意見が増える、コーチ間に不公平感が生まれる、多いところに人を当てこむが少ないところを減らせないので、経費がかさむ、という点です。
『人数わけ法』
級優先ではなく、人数が段階的に増えていく見た目の分かりやすさを優先にしたグループ分けの方法です。
- 1G 8名 水慣れ コーチ2名
- 2G 10名 水慣〜キック コーチ1名
- 3G 13名 キック〜クロール コーチ1名
- 4G 13名 クロール〜背泳ぎ コーチ1名
- 5G 13名 背泳ぎ〜 コーチ1名
メリット
段階的に人数が増えるので見た目的には整っているように見える、人数が多いクラスがないので安全管理しやすい、という点です。
デメリット
いろいろな泳法を含んだクラスになる可能性があるので、カリキュラムを覚えにくい、説明しにくい、新人スタッフが覚えられない、スキルが高いスタッフが必要、同じ級なのにクラスが別々になる可能性がある、という点です。
この2つのクラスわけの方法で何が分かるかというと、スクールの指導スキルの全体的なレベルとお客様主体に考えたスクールかどうかです。
『人数わけ法』を採用しているスクールのほうが、圧倒的にお客様のことを考えていると言えますし、実際にお客様にとっても満足度が高くなる傾向があります。
選手クラスの有無での比較
水泳選手を目指しているのであれば迷わず選手クラスがあるスクールを選択することのほうが良いこともありますが、そうでなければ、選手クラスがないスクールを選択するべきです。(※実は水泳選手を目指している人も選手クラスがないスクールを選んだほうが良いです。理由は後述します。)
よく見かける『間違った』選手クラスがあるスクールのメリット
『選手クラスがあるスクールの指導力はレベルが高い』と言われることがありますが、それはどこから生まれた情報なのでしょう。
実はこの情報は根拠に基づいたものではなく、選手クラスがあるスクールが掲げた『理想論』が、いつの間にか、さも正しい情報かのように伝わったものです。
理想論の概要
- 選手クラスのコーチは、選手を速くすることに特化しているので、泳ぎの知識レベルが高い。
- 選手クラスの選手の泳ぎは、通常クラスで練習してきたことの集大成であり、例えば『姿勢に課題がある』などの傾向をつかみ、通常クラスの指導にフィードバックすることができるので、全体的な泳ぎのレベルがあがる
- 選手クラスを担当しているコーチは、通常クラスを担当することもあるので、選手にするつもりで指導する
- 大会等に引率するため多くの泳ぎを見ており、目が肥えているから、才能を見抜く力がある
等です。
現実は理想論とかけ離れている
確かに、『理想論』通りであれば、指導レベルが高いスクールなのかもしれませんが、実際のスクール運営は、理想とは全く違います。
- 特化しているから知識があるとはいえない
- フィードバックを受けて、指導の修正ができるコーチは少ない
- 選手にするつもり指導すれば子供が上手になるわけではない
- 才能を見抜く力は、多くの泳ぎを見ることで養われるだけではない
選手クラスがあることのデメリット
選手クラスを担当するコーチは、確かに指導力が高い可能性が非常に高いです。
しかし、指導力が高いのは、選手クラスがあるからではありません。
スクールの中で指導力が高い人が担当する可能性が高いだけです。
ではなぜデメリットなのかというと、選手クラス担当コーチの1日を追うとわかります。
選手クラスのコーチの1日
- 12時〜13時 成人のレッスンなど
- 13時〜16時 事務処理やメニュー作成
- 16時〜17時 休憩
- 17時〜18時 通常クラスのレッスン
- 18時〜19時 育成クラスの担当
- 19時〜21時 選手クラスの担当
指導力が高いコーチであるにも関わらず、通常のレッスンは1時間しか担当していません。
また前述したように、フィードバックが生かされる環境(コーチ)が整っている可能性は低いです。
よって、スクールの中で指導力が高いコーチが、通常クラスに関わることがごく僅かとなり、選手クラスがあるスクールは、水泳選手を目指していない人にとっては、メリットがありません。
さらに、水泳選手を目指している人にとっても、指導力が高いコーチの指導和受ける可能性が低く、才能を発掘される可能性も低くなります。
水泳の才能とは?
水泳選手を目指すのであれば、選手クラスがないスクールで、指導力の高いコーチの指導を受ける可能性を高める事が、近道となります。
ある程度泳力がついたら、そのスクールで指導力が高いと言われているコーチに、『うちの子は才能がありますか?』と聞くと良いです。
才能がある子は、『けのび』や『バタ足』で顕著に他の子との差が現れます。
実際に選手クラスがあるスクールでも、このレベルに達した子供から選手クラスに引き抜く子を探していきます。
水泳の才能を見つけるポイント
水泳の才能とは何なのか、紹介しておきます。
- 足首の柔らかさ
- 足の大きさ
- 水の中での動き
- 水を捉える能力
- キックのリズムや推進力
- 肩の柔らかさ
- 泳ぎのリズム
- 目で見た物をコピー(再現)する能力
- 体のバネ
- 負けず嫌い
- 一生懸命さ
- 泳ぐのが好き
- 親、祖父母など家族の身長が高い
- お金持ちかどうか(習い事としてはさほどお金がかからないですが、競技になると、シーズンごとの合宿費用や一着数万もするような水着が必要です。)
選手クラスがなくても、そのスクールの指導力が高いコーチであれば、この才能に気づいてくれます。
本当に伸びると信じるような才能であれば、自分のスクールに留める理由はなく、選手クラスがあるスクールを紹介してくれるはずです。
良いレッスンの見分け方
表情
子供の表情
もちろん笑顔でレッスンを受けているかが一番大事です。
コーチに褒められたり、一緒に練習しているお友達と仲良くしたり、コーチが面白いことを言ったり、保護者と目があったりすると、子供は笑顔になります。
楽しくなかったり、疲れる練習が増えてくると、休みがちになったり辞めたいと言い出すことも多くなります。
基本的なことですが、笑顔が多いということは単純に良いレッスンです。
補足としては、特に、並んでいるときに後ろの方にいる子やコーチに自分から話しかけないような積極性がない子の様子を見ておくと、そのコーチの指導力がわかります。
積極性が高く自分からコーチに話しかけるような子供よりも、積極性が低い子に対してアプローチできるコーチは良いコーチと言えます。
コーチの表情
コーチも笑顔であるほうが当然良いですが、状況に応じて表情を使い分けることができるかが良いコーチの条件です。
直接指導を受けるとはいえ声が聞き取りづらい子供にとっても、話している内容は聞こえないギャラリーから観覧している保護者にとっても、真剣にアドバイスしている、悪いことをしたときに叱っている、よくできたときに褒めている、など、今なにを伝えているのかが表情だけで分かることはとても大事です。
指導のバリエーション
指導のバリエーションは6つあります。
- 賞賛→褒める
- 模範→見本を見せる
- 言語→言葉で伝える
- 補助→サポートする
- 補助具→ヘルパーなどの道具を使う
- 矯正→動作をなおす
それぞれを別々に使うわけではなく、対象者に合わせて、その割合を変えていきます。
この使い分けが上手なのが、良いコーチです。
その中でも特に割合として多いことが望ましいのが、『賞賛』と『模範』と言われています。
賞賛
よく『褒められて伸びるタイプです。』という人がいますが、、、褒められて伸びない人はいません(笑)
特に子供は、褒められると嬉しくなります。
嬉しくなるとまた褒めてもらおうと、次のチャレンジへの自主的な行動が促進されます。
また、褒められた子供の周りにいる子供も、『こうしたら褒められるのか。自分も褒められたい。』と思い、真似し始めます。
極論ですが、『賞賛』だけで子供たちは上手になっていきます。
- 子供をプールに立たせ、立てたことを褒める
- 少しでも動けたら、それを褒める
- 褒めると少しづつ動作が大きくなったり早くなるので、それを褒める
- 次は走ろうとするが、一定のスピードになったら足がもつれてコケそうになる
- コケそうになったら、足が床から離れたことを褒める
- 足が離れる時間が長くなると、水平姿勢に近づく
- 水平姿勢に近づくと、顔の一部に水がつく
- 顔が水についたことを褒めると、水につける部分が増えてくる
- 浮かんだ状態で手足を動かしたら進むので、それを褒めたらさらに動作が大きくなり、もっと進む
というと具合に、褒めるだけで上手になっていきます。褒める点をコントロールしていけば、泳法を習得することも可能です。
模範
子供は説明を聞いて理解することよりも、目で見てすることのほうが得意です。
模範のスキルが高いかどうかの判断基準は以下の通りです。
- 模範を見る子供たちの隊形に意図があるか?
- コーチの模範の方向に意図があるか?
- 模範の際に見てほしい点を伝えているか?
- 模範の動作がゆっくりかどうか?
- コーチだけでなく子供にやらせるバリエーションをつかっているか?
です。
その他の方法
基本的にすべて使います。それぞれの良いコーチの指導例を記載します。
- 言語→説明は短くできているか?アドバイスは否定語(〇〇がだめだよー)ではなく肯定語(〇〇しようねー)を多用しているか?
- 補助→必要以上に補助していないか?子供ごとで補助の方法が違うか?
- 補助具→背中ヘルパーの位置、個数を練習項目毎に変えているか?
- 矯正→静止動作で矯正しているか?
特に近年では、体に触れる事がある『補助』『矯正』をどのようにするかは非常にデリケートな問題です。
補助をすると『体に触らないでほしい(セクハラ)』、補助をしないと『コーチが自分の子を見てくれていない』という事が起こります。
昔からある問題ではありますが、近年では特に加速した気がします。
今後は、同性においても同じような問題が起きると想定されます。
現時点で、体に触れず子供達が上達する指導ができているコーチは、時代にあった指導ができる良いコーチだと思います。
クラス運営(ルールづくり)
『挨拶のときにきちんと並ばせることができているか?』につきます。
待つときは座る、説明のときは静かにする、ゴールしたらすぐに退水するなど、練習を効率的にすすめるために様々なルールを運用します。
どのコーチもこのルールを守ってもらうために頑張るのですが、良いコーチと普通のコーチとでは、子供達への浸透度合が全く違います。
浸透させられないコーチのクラスは、最初から最後までルールを守るように指導する『注意』ばかりになってしまいます。
良いコーチはルールを浸透させるためになにをやっているかというと、『挨拶のときにきちんと並ぶこと』を徹底的に指導します。
なぜかというと、レッスン中に一番最初に出てくるルールが『並ぶ』だからです。
一番最初のルールの運用を曖昧にするということは、『このコーチは曖昧でいいんだ』→『このコーチはルールを破っても大丈夫そうだな』ということをアピールしているのと同じことです。
よって良いコーチの条件は、挨拶のときにきちんと並ぶことを徹底して指導しているか?となるのです。
練習内容
練習カリキュラムはどのスクールもある程度決まっているので、参考になりません。
参考にできるのは、その練習に『競争の要素』を加えることができているか?という点です。
最近ではトラブルになる可能性(確率)が高くなることを懸念して『競争』させることを避ける傾向にありますが、子供は本来、競争することが大好きです。
しかし、トラブルになるケースは、コーチの声掛けが悪かったり、競争を取り入れていて負けた子の気持に配慮することができなかったりしたときだけです。
取り入れないという選択でも良いですが、泳力向上の近道になるのであればそれを選択できるコーチは良いコーチだと思います。
安全管理管理での比較
安全管理の体制は、今まで比較してきたどの項目よりも大事です。どんなに良いサービスやコーチだったとしても、この項目がおろそかな場合は、通うべきではありません。
安全管理を徹底しているかどうかのポイントを記載します。以下の項目が1つでも当てはまらなければ、ダメスクールと思って良いでしょう。
- 監視員が2名以上配置されているか?
- 監視員がトランシーバーを携帯しているか?
- 監視員が危険を知らせる道具を携帯しているか?(ホイッスルなど)
- スタッフがCPR・AED講習を受講しているか?
- 定期的に避難訓練を実施しているか?
- ギャラリーからプールサイドに危険を知らせるシステム(警報ボタンなど)があるか?
- 定期的に人数確認をしているか?
機械や道具に関しては、経費的な側面もあるので一概には言えませんが、それに変わる仕組みを取り入れているか?を確認してください。
まとめ
様々な比較を見ていきましたが、始める前にこれらを見極めるのは難しいかもしれません。
しかし、始めたからと言ってスクールを変えられないわけではないです。
早期に退会すると違約金などが発生する場合もありますが、大手だと満足度保証(初期費用の返金)といった制度を導入しているスクールが多いです。
また、新しく始める場合ですが、初期費用無料といったキャンペーンは、年間を通して半分ほど実施されます。(法律である程度きまっている)狙い目は、4.7.8.9.1.3月です。
これから始めようと思っている方、すでに始めている方も、この記事を参考にしていただけたら幸いです。